医学部には、厳しい受験を潜り抜けてきた勉強の得意な人が集まっているのですが、医学部で留年することは決して珍しいことではありません。
とりあえずの目標として、「6年間留年せずにストレートで医学部を卒業する」ことを掲げている学生も多く、留年に怯えて過ごしています。
本記事では、
- 医学部の留年事情
- 留年しやすい医学生の共通点
を解説します。
<特に読んでいただきたい方>
- 医学生
- 医学部受験生
医学部の留年事情
令和2年度に医学科を卒業した学生のうち、最短(6年)で卒業できていた学生は全体の83%でした。
すなわち、卒業生のうち、17%が少なくとも1回は留年を経験していることになります。(複数回留年している学生も含まれています。)
ただ、大学によって進級の厳しさに大きく差があることも確かです。
留年が多い大学(ワースト3位)を示します。
(データは令和2年度卒(平成26年度合格)のもので、カッコ内は6年間一度も留年せずにストレートで卒業できた人の%です。)
国公立大学は、
- 島根大学(67.9%)
- 徳島大学(72.8%)
- 山梨大学(75.2%)
私立大学は、
- 帝京大学(65.0%)
- 川崎医科大学(65.8%)
- 杏林大学(68.4%)
です。
66%となると、卒業時には入学時の同期の3人に1人がいなくなっているということですから、想像するとショックです。
なお、留年が少なかった大学は、
国公立で、愛媛大学(100%)、大分大学(100%)、和歌山県立医科大学(97.6%)
私立大学で、東邦大学(100%)、順天堂大学(96.1%)、自治医科大学(92.7%)です。
ここで、国家試験合格率とストレート卒業率の相関を考えてみましょう。次のグラフを見てください。

このグラフを見ると、ストレート卒業率と国家試験合格率にあまり相関がないことが分かります。
つまり、
留年率が高い(=ストレート卒業率が低い)大学に行ったからと言って国家試験に合格しにくいというわけではないし(例 →)、
逆に留年率が低い大学に行ったからと言って国家試験合格が安心というわけではありません。(例 →)
留年率が高いことは、学生自身の能力の問題ではなく、単に進級に関する大学の方針が厳しいことが大きな原因になっているのでしょう。
留年率が高い大学は、試験前後の緊張感で雰囲気が悪くなることもあるので、大学にこだわりのない受験生は、留年率が低い大学を選んだほうが良いと思います。

私は留年率高めの大学に通っていますが、試験直前になると明らかに病んでいる友達が現れます。
留年しやすい人
①なんやかんや耐えると考えている人
留年する人の中で一番多いパターンは、「なんやかんや耐える」と考えている場合です。
医学部の勉強は、「暗記」に重きを置いている部分も多く、量も膨大なため、一夜漬けで対策するのは困難です。
しかし、もともと頭のいい人たちが集まっていて(かつ自分の能力を過信しているからなのか)、「いけるいける、大丈夫」と直前まで勉強しない人がいます。
そして、このような人たちの何割かが留年します。
人並みに勉強すれば順当に進級できる実力を持っているだけに、留年してしまうのはもったいないことですよね。
②部活に全力を注いでいる

「部活を頑張りすぎた」は、2番目に多い留年理由です。
大学の部活動は、運営も自分たちで行わなくてはならないため、幹部の代は特に忙しくなります。
幹部の代での留年は特に気をつけなくてはなりません。
また、部活で忙しくて勉強に手が回っていないため、複数の教科で再試行きになり、回収しきれずに落として留年というパターンが多いです。
(『何か一つ苦手な教科で再試に行って、落として留年』ではないということです。)
部活に力を入れている人は、本試験の日程だけではなく再試験の日程も考慮して勉強計画を組むと良いでしょう。
再試験の日程同士が近い科目があれば、そのうちどちらかは再試行きにならないように気をつけましょうね。

もちろん、1つも再試にならないように準備することが前提ですよ 。
③情弱
医学部の定期試験対策で最も大切なのが過去問です。
試験範囲が広すぎるため、過去問である程度の傾向をつかまなくては範囲を終わらせることができません。
過去問は、部活の先輩や同期の間で受け渡しされますが、まれに過去問を手に入れることができない人がいます。
試験においてかなり不利になることは間違いありません。
また、「○○先生は大勢再試に行くけど、最後は拾ってくれる」、「△△は再試の難易度が高すぎるから、本試験で受かっておかないといけない」など、試験に関連する重要な情報は多くあります。
先輩や学年の情報通の友達から情報を収集し、うまく使って試験を潜り抜けていくことも大切です。
④受験で燃え尽きた人

1年生から2年生への進級のみ出現する留年パターンです。
大学受験の勉強で燃え尽きてしまい、大学に入学してから全く勉強をしなくなってしまいます。
出席数がそもそも足りずに、試験すら受けられないことも多いようです。
留年も複数回重ねる傾向にあり、卒業が危ぶまれてしまいます。(最悪放校も…)
⑤本当に医学部の勉強に向いていない人
医学部の勉強は、とにかく「暗記」が重要です。
稀に、この「暗記」が苦手なために留年する人がいます。
大学受験を数学だけで切り抜けてきた数強が多い印象です。
暗記が苦手だと自覚がある人は、周りより早く試験勉強を始める必要があります。
また、暗記自体は大学を卒業し医師となってからも求められることなので、大学の間に自分に合った暗記スタイルを身につけておきたいですね。


これが1科目の試験範囲です。
留年しないための方法
「みんなと同じこと」をする
医学部で留年しないためには、「人と違うことをしない」ことが重要です。
具体的には、
みんなと同じ時期に、みんなと同じ勉強の仕方をする
です。
みんなと同じことをしてさえいれば、少なくとも留年することはありません。
好成績を取りたい人は、
みんなより少し早く、みんなと同じ勉強+αをすればよいでしょう。
過去問を入手する
前述の通り、過去問は試験勉強に必須ツールです。
持てる限りのツテを使って過去問を手に入れましょう。
レジュメの復習に加えて、過去問を2,3回解けば大抵の試験は通すことができます。
(※大学によって異なる可能性あり。詳細は大学の先輩に聞きましょう。)
勉強にこだわりすぎない
「この参考書のここまで理解してから過去問解き始める!」
と、勉強方法にこだわる学生がいます。
意識としては素晴らしいのかもしれませんが、結局過去問を解くことができずに試験日が来てしまうことが多いです。
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実はこれ、2年生前期までの私です。
私は、過去問をかなり後回しにして試験勉強をしていました。
(レジュメを理解するまでは過去問を解く気がありませんでした。)
再試に行くことはありませんでしたが、再試スレスレの点数をとったことはあります。
しかし、2年生の後期からレジュメの復習と過去問を同時に始めるように勉強方法を変えると、劇的に成績が良くなりました。
それこそ学年上位常連になることができました。
さらに、レジュメだけを使っていた時よりも理解が早いように感じます。
過去問によってアウトプットをすることの大切さを実感しました。
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今回は、医学部の留年事情と、留年回避法を紹介しました。
以前、「もし留年をした上に医学部を卒業できなかったら、何の資格も持たない医学にちょっと詳しい三十路ができる」と言われたことがあります。
身も蓋もない表現ですが、まさにその通りです。
卒業できても、1年の違いで生涯年収がどれだけ変わるのかと考えるともったいない気がしてしまします。
学年が下がると友達と離れてしまいますしね。
医学部に入学できたからといって慢心せずに、ストレートで卒業しましょう。
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