医学部4年生時に、CBTとOSCEという大きな試験があるということを知らない医学生はいないでしょう。
でも、

聞いたことはあるけど、CBTとOSCEって具体的に何するの?
と疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、臨床実習前に行う共用試験(CBTと臨床実習前OSCE)について
- 何をするのか
- 出題範囲
- どのように評価されるのか
について詳しく解説します。
そもそも共用試験って?
共用試験は、ざっくり言うと医学生が受ける全国統一試験です。
①臨床実習前:CBT+臨床実習前OSCE(Pre-CC OSCE)
②臨床実習後:臨床実習後OSCE(Post-CC OSCE)
があります。
①は、学生が臨床実習に参加するために必要な能力を備えているかを評価し、
②は大学卒業を許容できるレベルの臨床能力を有しているかを評価します。
特に、①は私たちが臨床実習中に医行為をするために重要な試験になっています。

本来、医師でない者による医療行為は、医師法によって禁止されています。(第17条)
ですが、卒前教育においても診療に参加する実習を行うべきとの方針により、①に合格した者はStudent Doctorとして特定の条件下で医行為を行うことができるのです。

CBTとは
CBTとは、コンピューター上で行われる学力試験です。
少し変わった試験で、プール問題から受験生ごとに異なる320設問が出題され、そのうち約80問は採点されません。
CBTの仕組み

CBTは全国共通の試験ですが、大学のカリキュラムによって実施する時期が異なります。
そのため、公平な評価を得るために”項目反応理論(IRT)”を用いた試験方式が採用されているのです。
理論について詳しく分かっている必要はないので、どのように評価されるかだけざっくり説明すると…
問題セットは
- プール問題(前年度までのデータから良問と判断された8000題超)から約240問
- 試行問題約80問(次年度以降プールに加えるか検討。データを取りたい…)
の合わせて320問。
- 採点対象となるのは、前者の240問
- この240問は、前年度までのデータから難易度別に配点が異なる
→よって、実施時期や問題セットの違いによって公平性が損なわれないようになっている。
といった具合です。
成績評価は、単なる正答率ではなくIRTを用いて得られたIRT標準スコアによって行われます。

1/4は採点されないため、手ごたえよりも良い成績を取ることが多いようです。
出題範囲 ★コアカリに準拠
出題は、平成28年度改訂版医学教育モデル・コア・カリキュラムに準拠しています。
出題割合は、
出題割合 | |
A 医師として求められる基本的な資質・能力 B 社会と医学・医療 | 約10% |
C 医学一般 | 約35% |
D 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療 | 約20% |
E 全身に及ぶ生理的変化、病態、診断、治療 | 約20% |
F 診療の基本 | 約20% |
4年生までに学んだ基礎医学、臨床医学、公衆衛生などの各分野から幅広く出題されます。
疾患の各論からの出題が最も多いですが、他の分野もそれなりの問題数があるので、高得点を狙っている方は基礎医学、公衆衛生の復習も大切です。
とにかく最短で合格したい!という方は臨床系問題(QBだとVol.2)をとにかくやりこみましょう。
コアカリキュラムはこちらから↓
気になる方は読み込んでみるのもおススメです
各ブロック
CBTは7ブロックから構成され、各ブロック1時間の制限時間が設けられています。
ブロック1~4:五選択肢択一 (各60問)
ブロック1~4はよくある択一問題です。
A~Eの5つの選択肢から正解を選びます。
このブロックでは、制限時間が許す限り見直しが可能です。
ブロック5:多選択肢 (40問)
基礎と臨床を統合したもの及び症候から病態を選ぶ問題が出題されます。
設問分を読み、最も当てはまると考えられるものを6つ以上の多選択肢から選びます。
ブロック5でも見直しが可能です。
ブロック6:順次解答4連問 (40問)
ブロック6では、同一の症例に対し、関連する4つの設問が連続します。
各設問の解答は5選択肢択一式です。
たとえば…
(1/4)
主訴○○で来院。……
患者に聞くべきことは何か。
A.「体重変化はあるか」 B.●● … E.××
(2/4)
主訴○○で来院。……半年で8キロ体重が減ったという……
この患者で認められる可能性が高い診察所見は何か。
A.■■ B.★★ … E.※※
(3/4)
主訴○○で来院。……身体診察にて★★が認められた。この患者の確定診断に必要な検査は何か。
A.単純CT B.MRI …… E.生検
(4/4)
主訴○○で来院。……生検にて得られた病理像を示す。この患者の治療で正しいのは何か。
A.●● ……
このように一続きになっている問題が4問(×10=40問)出題されます。
構造上次の問題に進むと自動的に答えが分かるようになっているので、ブロック6だけは見直しできない仕様です。

上の例で行くと、(2/4)の問題文によって『体重変化』について聞いたこと、すなわち(1/4)の正答がAであったことが分かってしまいます。
答えが分かってしまうのに後戻りできないという仕様はなかなかに厄介です。
正解していた場合は良いのですが、もし間違っていた場合結構へこみます……
ブロック7 (ブロック6の時間+10分)
ブロック7は、アンケートブロックです。成績には関係しません。
ブロック7は、ブロック6の時間に回答することができるので、ブロック6を早く終わらせた人はブロック7に進みます。
アンケートは主に文章で回答するため、キーボードの音が少々うるさいです。
したがって、ブロック6以降では耳栓の持ち込みが許可されています。
他の人のタイピング音で気が散ると考えらえれる人は、耳栓の持ち込みを申請しましょう。

CBTは、試験時間こそ計6時間とそこまで長くないですが、休憩時間込みで朝9時前から18時までかなりの長丁場になる試験です。
ずっとパソコンとにらめっこで肩こりとドライアイと頭痛との闘いです。
休憩時間はちゃんと試験室から出てリフレッシュすることを忘れないでください。
CBT公開問題
共用試験を実施している医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)は、医学系CBTの公開問題を掲載しています。
ガイドブック(以下のリンクから)の28ページからです。
OSCE (Pre-CC OSCE)とは?

OSCE(=Objective Structured Clinical Examination) は、基本的臨床技能と態度を評価する実技試験です。
臨床実習前に行うPre-CC OSCEでは、
- 医療面接
- 頭頚部
- 胸部
- 全身状態とバイタルサイン
- 腹部
- 神経
- 基本的臨床手技
- 救急
- 四肢と脊柱
- 感染対策
の最大10課題(1~8は必須、9,10については大学毎の判断)を実施します。
受験生は各ブースをまわり、与えられた課題シートに従って模擬患者に対する医療面接、身体診察を行います。
試験の流れ
①試験室への入室
→名乗る、手指消毒、課題シートを読む(1分間)
②実技開始(医療面接は10分、その他5分)
→課題シートに従って実技を行う
共用試験ガイドブック
共用試験のサンプル課題を見ることができます。
(臨床実習前OSCEサンプル課題は、47ページから)

OSCEの試験範囲は、こちら↓
の第4.2版です。(2022年11月現在)
臨床実習前OSCEでは、*のついていない項目が試験範囲です。
各ブースには模擬患者と数人の試験官がいます。
試験官は自大学の先生に加え、機構や他大学から派遣されている人もおり、ガッツリ手元まで覗き込まれるのでなかなかに緊張する試験です。
評価
OSCEの評価は
- 項目加算得点:診療テクニックと患者さんへの配慮
- 概略評価:診察の流れ、患者さんへの対応 等
からなります。
項目加算得点
試験室ごとに、学生が実施する課題における技能・態度などについて、患者さんへの配慮と診察技能を加算方式で評価します。
加算ですので、何かで大きな失敗をしても挽回が可能です。
(国試にあるような禁忌がない。……多分……)

一つ一つの課題をしっかりとやって時間切れになるよりは、多少雑でもひととおり課題を終わらせる方が大切だったりします。
もし、診察技能に自信がない場合でも患者さんへの配慮だけは忘れないようにしましょう。
概略評価
項目加算得点では評価できない部分(患者さんへの対応、診察の流れ 等)を6段階で評価します。
6 | 優れている(臨床研修の開始時点で期待されているレベル以上) |
5 | 良い(臨床実習の中間時点で期待されているレベル) |
4 | 合格(臨床実習の開始時点で期待できるレベル) |
3 | 合否境界領域 |
2 | 不合格だが改善可能 |
1 | 明らかに不合格 |
診療テクニックとは別の評価ですので、どんなに診療テクニックに優れていても概略評価で不合格になることも考えられます。
OSCE対策のために、各自練習をするとは思いますが、本番では模擬患者に礼儀正しく対応し、スムーズな診察の流れを意識しましょう。
模擬患者に暴言を吐いて不合格になった人がいると聞いたことがあります。

OSCEはかなり緊張すると思います。が、何かやらかしてしまっても加点方式だから大丈夫!と自分を元気づけて他の項目をきちんとこなしましょう。
私自身、まあまあ大きめのやらかしをしてしまいましたが、無事合格することができました。
補足
New!
(実は)大学が自律的に実施してきた全国統一共用試験ですが、医師法改正により令和5年4月から公的な試験になることが決定しました。
<公的化とは?>
共用試験は、これまでもすべての医学系大学で実施されてきたので、基本的に何かが大きく変わることはありません。
ただ、全国統一基準の導入やOSCEの評価体制の変更などにより、従来の試験よりも厳しくなると考えた方がよさそうです。
先輩に聞くと「OSCEは普通落ちないから大丈夫」と言われると思いますが、その先輩がOSCEを受けたころとは変わっているのであまりうのみにしないようにしましょう。
某大学は4割近く再試に行くことになったとのうわさもあり、もはやOSCEは落ちない試験ではないです。
まとめ
以上、医学系共用試験について解説しました。
CBT、OSCEに合格しなければ臨床実習に参加することができませんし、将来の就職にも関わってくる大事な試験です。
しっかりと準備して臨むようにしましょう。

詳しいことを知りたい方は、共用試験を実施している『公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)』のHP(https://www.cato.or.jp/)へ

コメント