医学部で勉強する組織学にはたくさんの”層構造”が出てきます。
大脳新皮質の6層構造、網膜の10層構造、小脳、外皮…………
試験の度に覚えて→忘れて→また覚えて……を繰り返している人も多いのではないでしょうか?
本記事では、そんな”層構造”をまとめました。ぜひ、勉強するときに活用してみてください。
(作成した図は、勉強のためになら自由に使っていただいて結構です。)
頭部
大脳新皮質の6層

大脳の新皮質は、6構造。
表層から、
①分子層(molecular layer):下位層の樹状突起と、それに終わる入力線維からなる線維層。ニューロン成分に乏しい。
②外顆粒細胞層(external granular layer):小型の円形または錐体細胞。連合ニューロンと交連ニューロンがある。
③外錐体細胞層(external pyramidal cell layer):中型の錐体細胞。連合ニューロンと交連ニューロンがある。
④内顆粒細胞層(internal granular cell layer):視床中継核からの入力を受ける。多数の樹状突起棘を持つ星状細胞。
⑤内錐体細胞層(internal pyramidal cell layer):大型錐体細胞。出力を担う。一次運動野で発達している。(一次運動野のBetz細胞)
⑥多形細胞層(multiform cell layer):視床に投射する出力層で、紡錘細胞からなる。
メモ)
旧皮質(大脳原皮質や古皮質)は、3~5層の不等皮質である。
小脳の3層

小脳皮質は3層。
①分子層(molecular layer):平行線維(顆粒細胞の軸索)、プルキンエ細胞の樹状突起、星状細胞、バスケット細胞
②プルキンエ細胞層(Purkinje cell layer):プルキンエ細胞の細胞体、ゴルジ細胞
③顆粒層(granular layer):顆粒細胞の細胞体
眼球

眼球の壁は、3つの層からなる。
①眼球線維膜(=眼球外膜):強膜、角膜
②眼球血管膜(=眼球中膜、ブドウ膜):脈絡膜、毛様体、虹彩の間質部
③網膜:網膜視部、網膜色素上皮層、毛様体と虹彩の上皮層(網膜毛様体部、網膜虹彩部)
網膜の10層

網膜は10層構造。光が入射する方向から、
①内境界膜:Müller細胞の基底板
②神経線維層:神経節細胞の軸索。(視神経管を通り、脳まで達する)
③神経節細胞層:神経節細胞の細胞体
④内網状層:水平細胞、アマクリン細胞、双極細胞、神経節細胞の突起が存在
⑤内顆粒層:アマクリン細胞、双極細胞、Müller細胞の細胞体
⑥外網状層:杆体視細胞と錐体視細胞の突起と、アマクリン細胞・双極細胞・網状層間細胞の突起
⑦外顆粒層:杆体視細胞と錐体視細胞の細胞体
⑧外境界膜:Müller細胞の先端部の境界
⑨視細胞層:視細胞の外節と内節からなる
⑩網膜色素上皮層:網膜の最外層。血液-網膜関門を構成。
角膜の5層

角膜は5層構造。
①角膜上皮(corneal epithelium):角化しない重曹扁平上皮。旺盛な再生能力を持つ。
②ボーマン膜(Bowman’s membrane):無構造で均質に見える膜。再生能力はない。
③角膜実質(corneal stroma):角膜全体の厚みの90%を占める。コラーゲン細背にの束から成り、間には扁平な線維芽細胞が存在。
④デスメ膜(Descemet’s membrane):角膜内皮細胞の基底板。再生可能。
⑤角膜内皮(corneal endothelium):1層の扁平細胞からなる。角膜の栄養や代謝産物の交換輸送を担う。
循環器系
心臓

心臓壁は3層構造。内側から、
①心内膜(endocardium)
②心筋層(myocardium):心筋からなる。
③心外膜(epicardium):漿膜性心膜の臓側板(visceral layer of serous pericardium)とも。1層の中皮細胞と裏打ちする結合組織と脂肪組織から成る。
心外膜は、心臓に出入りする大血管のところで反転し、漿膜性心膜の壁側板(parietal layer of serous pericardium)となる。
臓側板と壁側板は間は心膜腔(pericardial cavity)である。
血管

動脈壁は3層構造。内側から
①内膜(tunica intima):内皮、内皮細胞の基底板、内皮下層、内弾性膜(板)
②中膜(tunica media):血管平滑筋層
※②と③の間:外弾性板
③外膜(tunica adventitia):コラーゲン線維、弾性線維。太い血管ならば、脈管の脈管(vasa vasorum)、脈管の神経(nervi vasorum)が存在。
腹部
副腎皮質
副腎皮質は、3層構造。
表層から、
①球状層:鉱質コルチコイドの産生する。RAA系のフィードバック調節を受けて分泌。
②束状層:糖質コルチコイドを産生する。ACTHによる調節を受けて分泌。
③網状層:作用の弱いアンドロゲン(大部分はDHEA)を産生。ACTHによる調節を受けて分泌。
皮膚
皮膚は表皮と真皮の2層構造。
表皮

表皮は4層構造。表層から、
①角質層(stratum corneum):扁平かつ無核。
②顆粒層(stratum granulosum):ケラトヒアリン顆粒を有する
③有棘層(stratum spinosum):特徴的な棘突起を有する。突起は隣接する細胞とデスモソームで結合。
④基底層(stratum basale):表皮の幹細胞からなる。単層。
真皮
真皮は2層構造。
①乳頭層:表皮直下の疎性結合組織からなる。表皮には侵入しない血管、感覚神経終末が集まる。
②網状層:乳頭層と比べると厚く、細胞成分は少ない。
その他
軟骨内骨化

軟骨内骨化による骨成長にて見られる層構造は、骨化中心から見て最も遠位側→骨化中心で
①補充軟骨帯(zone of reserve cartilage)
②増殖帯(zone of proliferation):軟骨細胞が増殖し、長軸方向に並んで小柱構造をとる。
③肥大帯(zone of hypertrophy):顕著に肥大した軟骨細胞が存在。VEGFを分泌し、血管侵入を促す。
④石灰化軟骨帯(calcified cartilage):軟骨マトリックスの石灰化が始まる。
⑤吸収帯(zone of resorption):骨前駆細胞の供給と骨芽細胞への分化。
最後に

以上、組織学で出てくる人体の層構造についてまとめました。
他にも”層構造”があれば追加していく予定です。
画像は勉強のためならば、好きに使っていただいてよいのでぜひ活用してみてください。
★★★
記事を書くときに参考にした書籍です
▼組織学を勉強するなら、『ROSS 組織学』一択!!!
▼神経系の解剖をサラッと勉強するのにおススメ、『神経解剖学 講義ノート』
★★★
人体の面白さを知るおススメ本です。『すばらしい人体』
コメント